英国の彫刻家ヘンリームーア スタジオズ&ガーデンズ 【後編】
ヘンリームーア スタジオズ&ガーデンズに行ってきた記事の後編です。
前編はこちらから↓
園内の自然と彫刻達
彫刻を囲む自然が、作品をますます魅力的に演出してくれます。
屋外に彫刻を集めた「彫刻庭園」のタイプのガーデンは、様々なアーティストの作品があちらこちら設置され、時に作品同士が喧嘩してしまうこともあるのですが、ここではムーアの作品しかないので、お互いに主張しあうことなく園内に収まっているようにも感じました。
太陽の向きによって影もダイナミックに変わるのも、屋外展示ならではですね。
今年は春が少し遅れたせいもあり、新緑がちょうど出そろってきたばかりで、自然そのものも、とてもフレッシュで綺麗でした。
ディテールも観てよし
ムーアの彫刻は、遠くから背景の自然と組み合わせて眺めるのもよいですが、近くによるとまた異なる景色が見えます。
空の色が彫刻に映りこみ、反射光が青色に見えます。
夕焼けの時は赤く見えるのでしょうか。
多くの彫刻は触ってもオッケーなので、触ってみてもよしです。
ただ、素材が金属のものは太陽の熱を吸収しているとアツアツなので注意!
スタジオや室内で展示されている数多くのスケッチや試作モデルを観ると、彼が身体の特定部位に興味があり、作品で誇張され、それ以外のあまり興味のない部位は縮小され、簡略化されているのが伝わってきます。
胸部や臀部、手はよく強調されていますが、それに比べると足や頭部は比較的シンプルだったり。
コロナ感染対策のために、新しく設置された手洗い場も素材や形状にこだわっていました。
彼の作品ではないけれども、こういう細かいディテールへの気配りも、全体の雰囲気を保つのに大事ですね。
まとめ:ヘンリームーアが好きなら行くべし
園内を歩き回ったり、日向ぼっこしつつお茶をしたり、軽くスケッチして過ごしたら、半日たっぷり過ごせました。
期間限定の作品展はコロナの人数制限の関係で規模縮小していたので、フルで展示してあったらもう数時間はかかったかもしれません。
お客さんの中には作品を見るのに飽きたのか、ピクニック感覚で木陰で休んでいる人もいました。
隣に作品があろうが、自由気ままに過ごしても「どーん」と受け入れてくれる余裕のようなものが、ヘンリームーアの作品にはあるように思います。
ヘンリームーアの作品が好き、屋外彫刻と自然の関係がすき、イギリスの田舎が好き、と言った人にはぜひおすすめしたい場所です。
参考資料:
この記事を書くにあたり参考にしました。
撮影不可なヘンリームーアの家の中の写真も載っているのでとても気に入っています。
お手頃サイズで写真もたくさんあるので、お土産にお勧めです。
Henry Moore Studios & Gardens Guidebook
Scala Arts & Heritage Publishers Ltd
2020
英国の彫刻家ヘンリームーア スタジオズ&ガーデンズ 【前編】
5月31日月曜日はSpring Bank Holidayと呼ばれる祝日にあたり、土日と合わせて三連休になっています。
日照時間も夜9時まで伸び、出かけるのにぴったりの天候で、毎年遠出する人々で混雑します。
昨年の三連休はまだまだロックダウンによる規制で、レストランもお店も閉鎖中だったので、今年こそはと出かける人も多かったと思います。
この時期は20度前後の気温で何しても快適で、新緑も出始めて何もかもフレッシュに見える季節。私もイギリスの一年の中で一番好きな季節かもしれません。
せっかく天気のよい三連休なので、家の中に居るのももったいないし、屋外の展示も楽しめる「ヘンリームーア スタジオズ&ガーデンズ」に行ってきました。
ヘンリー・ムーアとHenry Moore Studios & Gardensについて
ヘンリー・ムーア(1898-1986)はイギリスの近代の芸術家の中でも最も有名な一人です。
とりわけ有名なのは彫刻ですが、他にも絵やテキスタイル、タペストリーなど様々な媒体の芸術作品を世に送り出し続けました。
特に、彼のブロンズ彫刻は有名で、世界各地の様々な場所で展示されています。
彫刻が好きな人は一度は見かけたことがあるかもしれません。
日本でもヘンリー・ムーアの彫刻は有名で、箱根の彫刻の森美術館などにコレクションがあるそうです。
ロンドンのハムステッドに暮らしていたヘンリー・ムーア夫妻ですが、1940年、外出から戻ってくると、ロンドンの自宅は爆撃によって破壊されていました。
仮の住まいとして、ロンドンの北に隣接するハートフォード州にある小さな村に、ヘンリー・ムーアは住居兼スタジオを構えました。その後は生涯にわたって住み続け、今はHenry Moore Foundationに管理され、現在は「Henry Moore Studios & Gardens(ヘンリームーア スタジオズ&ガーデンズ)」彼の作品を展示する美術館となっています。
ヘンリー・ムーアが住んだ家は「Hoglands」と呼ばれ、彼が住んでいる間、徐々に住宅周辺の土地や牧草地、物件も追加で購入し、制作スタジオをあちこちに建てました。最終的に彼が購入した土地は、Hoglandsとその周辺の土地を含めて60エーカーまで広がりました。
参考リンク: ヘンリームーア スタジオズ & ガーデンズ
常設されている彫刻の他に、シーズンごとに入れ替わりで彼の絵や他の作品の展示も行われています。
以前にも訪れたことがあるのですが、季節ごとに違う表情を見せる彫刻や、期間限定の展示が観たくて、今回二度目の訪問になりました。
ヘンリー・ムーアの彫刻の魅力
ヘンリー・ムーアの有名な彫刻の多くは、抽象化された人体が多く、その有機的な形状は、屋外展示で特にその魅力を発揮します。
彫刻のサイズも数メートルと大きく、スケールの大きい場所に設置されてこそ、彼の表現しようとしたものが何となく伝わるのかな、と個人的には思います。
彼の彫刻はイギリス中の各所にあり、街中やロンドンのテートブリテン美術館にもヘンリー・ムーアの彫刻のコレクションをいくつか観ることができます。
ですが移動手段がある人はぜひ自然豊かな屋外で展示されているヘンリー・ムーアの彫刻を観ましょう。スケールの大きさが違います。
歩き回ることで「体験」する彫刻の魅力
ヘンリームーア スタジオズ&ガーデンズの中でも特に一押しな彫刻は、牧草地の真ん中に設置されている「Large Reclining Figure」です。
彼の彫刻の中でも最大サイズで、全長9mあります。
遠くから眺めると、周辺の風景に比べてとても小さく見え、近づいていくと徐々にそのスケールの大きさが分かります。
歩き回ることで様々な距離から彼の作品を「体感」できます。
屋外彫刻を語る上で外せない要素の一つに、日々、刻々と変化する環境があります。
季節や天候が変わるだけで違う雰囲気になる様を観察するのは、美術館や室内展示ではできない体験です。
いくつもあるスタジオ
敷地内には彼の制作スタジオも「いくつか」あります。
そう、複数あるのです。
絵を描くスタジオとか、小さい彫刻をつくるスタジオとか、大きい彫刻をつくるスタジオとか、用途ごとにスタジオがあり、彼の創作の源や過程を感じられるのが魅力的。
それにしても、デザイナーとしては、スタジオが一個あるだけでも羨ましいのに、用途ごとにスタジオを持っているなんて羨ましい限り……。
ヘンリー・ムーアが住んだ「Hoglands」内部にも彼が集めたりインスパイアされた美術品や石などが飾ってあり、彼のアイディアの源泉を垣間見る事ができます。
※家の中の写真撮影は不可となっています。
残念ながら2021年現在は、コロナの規制の関係で現在は閉鎖されていますが、見学可能になっていたらぜひ一度室内を観ることをお勧めします。
私はコロナの前に訪れた際に見学しました。友人のアーティストからもらった作品や、世界各地から収集した美術品、道端で拾った石ころなどが所狭しと並べられていて、ムーアが好きな物事が伝わってきました。
長くなってきたので、後半へ続きます↓
鬼滅の刃、上映開始 ――英国よ、これが鬼滅だ。
5月17日から、ロックダウンの規制緩和の第三弾(Step 3)が実施されました。
これに伴い、レストランやパブでは屋内で飲食可能となり、屋外で30人まで集まれたり、他世帯とのハグも可能(!)になりました。
美術館や映画館といった屋内娯楽施設も営業可能となり(ナイトクラブは除く)、活気が戻ってきた印象です。
コロナの前の生活からはまだまだ遠いですが、去年の今頃と比べたらかなり自由に暮らせるようになりました。
映画館もやっと解禁になったものの、ブロックバスターやハリウッド映画が軒並み延期になっているので、まだ上映本数は少ないです。それでも去年イギリス未公開だった作品や、オスカー賞受賞作品などが公開され始めました。
そして、そして5月26日、ついにイギリスでも日本映画「劇場版鬼滅の刃・無限列車編」が公開となりました~!
昨年11月に鬼滅の刃が観られないという記事を書き、さらに待つこと半年経過…。
普段だと、日本製のアニメはロンドンなど、大都市の大型映画館に行かないと観れないのですが、今年はまだ上映可能な映画の本数が少ない所為か、地方の映画館でも上映している様子です。
というわけで、私もさっそく観に行ってきました。
今回は、イギリスの映画事情と鬼滅事情のお話です。
イギリスの映画館の仕組み
イギリスの映画館にも、大手シネコンや小さなシアターまでいろいろありますが、ここでは一般的な大手のシネコンの説明をしていきたいと思います。
料金は2D上映の映画で、大人一人当たり6~14ポンド。
この値段の幅が面白いのですが、イギリスでは、映画の料金は混雑する上映時間帯によって変動します。
平日の昼間は「オフピークタイム(Off peak time)」と呼ばれ、比較的空いているため最低料金の6ポンド前後。
逆に平日の夜や土日は仕事帰りのお客などで需要が高くなる「ピークタイム(Peak time)」と呼ばれ、最高料金の13ポンド前後かかります。
安い時間に観れば900円前後(1ポンド=150円換算)、混んでいる時間だと2000円前後ですね。
「夜や週末に来るってことは昼間働いてお金があるんでしょ?」と暗に言われているような超現金なシステムです。
金がなくて時間がある人は空いている時間に行くべし、とも言えます。
ちなみにイギリスではこの「ピーク/オフピークタイム」の料金システムは映画に限らず、電車やバスの乗車料金、遊園地やイベントのチケットなどでも使われています。
館内にはポップコーンなどの軽食店が入っているのは日本と同じですが、物販ブースは基本的にありません。
以前とあるラジオ番組で聞いたのですが、映画のパンフレットは日本独特の映画文化だそうで、イギリスでは映画パンフの販売もありません。
映画館限定の物販やパンフが好きな人には少し寂しいですね。
鬼滅の刃の知名度やいかに?
英語版のタイトルは「Demon Slayer -Kimetu no Yaiba-」として知られている鬼滅。
イギリス人の友人は「Damon Slayer」って言ったりそのまま「Kimetu!」と言ったりします。
最近はネットフリックスなどの配信サイトの普及のおかげで、日本のアニメも日本放送とほぼ同時期に配信されているためか、アニメが好きなイギリス人だったら知っている印象です。
ロンドンにある日本のお店、ジャパンセンターにも鬼滅関連のグッツが前面に売り出されているので、それなりに人気があるはず。
私が観た映画館は少し郊外の映画館だったので、ロンドン中心部より観客は少ないと予想していましたが、それでも30人前後人が入っていました。
小さめのシアターサイズ、それも平日の夕方にしては中々の人入りです。
上映時間が遅かったのもあり、年齢層は20~40代くらいの人が多かったです。
劇場に居た観客が鬼滅のアニメ全話を観てから映画を観に来ているかもしれない、と思うと少し感動しますね。普段生活していて鬼滅好きを探すのはとても大変なのに…!
(※一応映画を観ていない人に補足すると、この映画はアニメシリーズの続編としてつくられているため、アニメ、もしくは原作コミックを読んでいないと話の文脈が分からないつくりとなっています)
ちなみに、以前にも、別の日本映画をロンドンに観に行ったことがありました。
その時は「日本のアニメ大好きです!」とアピールする服やグッツを着けている観客が集まっていて、そういう客層を眺めているのも楽しかったりします。
イギリスでは日本語のキャスト&英語字幕版と英語吹き替え版の2種類が上映されています。
私が観に行った回は字幕版だったので、日本の映画を観る感覚で楽々鑑賞!
ハリウッド映画などを英語字幕付き映画を観ると、字幕を追いかけるのに忙しくて映像に集中できないですからね…。
映画の出来は評判通りよかったです。
あえて言えば、映画単品作品としては物足りないところもあるのですが、アニメシリーズの1作品として観ると、これ以上うまくまとめるのも難しいかと。
逆に、映画単独で観られるよう機能するように作ったら、アニメシリーズと作風が変わってしまう気もするので、ちょうどよい出来でした。
何より映画館で映画を鑑賞するのが1年半ぶりだったので、大きいスクリーンと高性能の音響で映画を観る「体験」そのものの良さを改めて体感したのでした。
いや~映画館ってやっぱりいいものですね~。
以下映画ネタバレを含んだ感想
私は原作コミック全巻履修済みなので、話の展開自体は知っていましたが、後半の展開はやっぱりアツかったですね。
映画館映えするように作られているので、テレビサイズで観たら味わいきれなかったと思います。
後半戦の煉獄さん VS 猗窩座は大画面で観ないと細かいところまで見えませんし、映画館で観れてよかったです。
日本でも公開から2週間ほどしてネタバレ全開予告編が出ましたが(公開当初は伏せられていた猗窩座というキャラクターが出るバージョン)、海外でもネタバレ版予告編がしばらくしてから公開されました。
イギリスのシネコンの公式サイトではこれが掲載されているのですが、最初からネタバレ全開でいいのでしょうか…?
元波止場をアートスペースに、ロンドンの Trinity Buoy Wfarf
先日、ロンドンのカニングタウン近くにある 「トリニティボイワーフ(Trinity Buoy Wharf)」 という、アート&カルチャーセンターへ行ってきました。
そもそもなぜこの場所を知ったかといえば、ロックダウン中に
「Landscape artist of the year」というテレビ番組の中で取り上げられていたからです。
この番組は公募で集めたアーティストが各回それぞれ6人、イギリスの各地に出向き、4時間でランドスケープの絵を一枚描き、優秀者が次のラウンドに進んでいくというものです。
お題となる場所は毎回異なり、ロンドンのオリンピックパークから自然あふれるチャートウェルまでバラエティに富み、Trinity Buoy Wharf はそんなお題の場所の一つでした。
Landscape artist of the year のサイト
歴史と概略
Trinity Buoy Wharfはテムズ川周辺で使われるブイや灯台船を製造したり保存、管理する場所として長らく使われてきた歴史があります。
「Buoy」は英語で「ブイ」、「Wharf」は「波止場」という意味です。
1988年に波止場としては閉鎖され、1998年から現在までTrinity Buoy Wharf Trustという団体が管理、運営しています。
敷地内には貸オフィス、アーティストへのアトリエや学校、カフェ、アートの展示などがあり、アートやカルチャーに関わるアクティビティを発信、促進している場所となっています。
川と川に挟まれた半島のような場所に位置しており、かつては半島全部が波止場として用いられていましたが、現在このエリアは住宅建築開発の真っ最中。
Trinity Buoy Wfarfに向かう途中の地区では高層マンションが大量に建てられていました。
歩き割った写真いろいろ
当日は近くのカニングタウン駅から徒歩で敷地へ向かいました。
Trinity Buoy Wfarfの入り口。隣の地区全体では高層住宅街を建築中で、工事音が響いていました。
イギリスは2021年現在でも深刻な住宅不足が続いているため、高層マンション回衣鉢をあちこちで見かけます。
写真の中で大きくと「Trinity Buoy Wfarf」と書いてある建物は、現在は4~11歳向けのプライマリースクールとして使われています。
入り口横にある建物は、元は倉庫だったもので、現在は[The Royal Drawing School」として様々な年齢の人にアートを教える教育施設として使われています。
私が滞在している間にも、建物からキャンバスを持った学生たちが、スケッチをするために出かけていきました。
隣の建物はバーのようなイベントスペースとして用いられているようでしたが、ロックダウンの関係か今はまだ閉鎖中の様子。
工業地帯にありがちなコンクリートの舗装とペンキも、建物とマッチしていておしゃれですね。
敷地内には元灯台もあります。中はアートの展示室となっているのですが、たまたま何かの撮影が行われていて、フィルムクルー以外立ち入り禁止になっていました。残念!
左側の青い建物は、2012年のロンドンオリンピックの際に放送スタジオとしてオリンピックパークで使われたものが解体され、ここに持ち込まれ再利用されています。貨物コンテナを模したもので、簡単に組み立てと分解がだそうです。今は貸しオフィスになっています。
こちらは既存の建物の隙間に建てられたンテナハウス。元波止場という土地の背景を生かして、クレーンのコンテナ風を使っています。
コンテナハウスの中は細かく仕切られていて、アーティストへの貸しスタジオとなっています。背景の高層住宅街建築のクレーンがコンテナとマッチしていていい感じ。
高層マンションを建てているので騒音が響き渡っていたのですが、工事現場特有の忙しさすらもこの空間の空気の一部でもある気がして、「この住宅街の開発が終わったら少し寂しいかも?」と私は思ってしまいました。
右手の長屋風の建物は1875年に建てられた「Proving House」と言って、テムズ川で使うブイの鎖の強度試験をする建物だったそうです。今はアートスタジオに。
左手の茶色い建物は、1952年に建てられ、現在はイングリッシュナショナルオペラ( English National Opera)の舞台装置や小道具をつくる工房として使用されています。
一見すると工場地帯に見える場所ですが、中身はそれぞれとってもアートな空間になっているわけですね。
新しい建物を立てなくても、内装だけ改装して再利用することで、土地柄や歴史を活かしています。
波止場なので、すぐ横はテムズ川です。船を改装して再利用しているものもあり、手前の「W」がついている船は「Knocker White」と呼ばれる引き船で、今はここで保存されています。
この船以外にも元灯台船やはしけ舟が岸壁のあちこちに係留されて、保存されています。
白い桟橋から続いている埠頭もTrinity Buoy Wfarfの一部として使用されているそうです。
写真で紹介した建物以外にも、元電気室やらボイラー室だった歴史的な建物が再利用され、更にその隙間にコンテナハウスやカフェといった新規の建物を敷き詰めて、密度の高い空間を作り出していました。
建物の写真をメインに紹介しましたが、敷地のあちこちに小さいアートインスタレーションや彫刻も飾ってあって、一つ一つ細かく見ていくのも楽しかったです。
ロックダウンされていない時は結婚式会場として貸し出していたり、ワークショップやイベントを多数開催しているとのことで、カルチャーの濃度が高いエリアとして発信しているようです。
Trinity Buoy Wfarfに隣接するエリア
Trinity Buoy Wfarfの隣接エリアにも過去の建物が再利用されていて、産業計の建築が好きな人は歩き回るのが楽しいかと。
更にその先には、歴史的なエリアから一変して、完全新規の高層マンション群が立ち並んでいます。こちらは隣り合わせの地区とは思えないくらいモダンです。
色合いや形がどことなく貨物のコンテナっぽいです。Trinity Buoy Wfarfのコンテナハウスと同じく、波止場だったことを意識してデザインしているのかもしれません。
職業柄、ビルよりランドスケープに目が行ってしまう(笑)。
歩道の雨水がそのまま植栽エリアへ流れ込むように、縁石に隙間が空いていますね。
自転車を止めるスタンドもモダンでスタイリッシュ。地面に落ちた影がまた素敵。
半日ほど滞在していましたが、建物や展示を見るだけで結構楽しめました。これからもっと注目される場所になりそうです。
ロックダウンが解除されて室内展示やイベントが再開されたらまた訪れてみたいです。
アクセス
最寄り駅は JubileeラインのCanning Town駅です。
駅から徒歩10分弱ぐらいで着きました。
参考
半年ぶりにロンドンの中心部へ
4月12日からロックダウンの規制緩和のステップ2となり、生活必需品以外の小売店、美容院、屋外アトラクションやジムなども再開されました。
レストランやカフェは屋外での飲食が可能になります。
移動の規制も少し緩くなったこともあって、用事を済ませにロンドンの中心部へ約半年ぶりに行ってきました。
海外からの観光客がほとんど来ていないのと、未だにリモートワークで働いている会社も多いせいか、とにかくどこも人気がありません。
これが世界に名だたる大都市ロンドンなのでしょうか、下手すると日本の地方都市より人の数が少ない印象です。
今回はパンデミックの前では見かけなかったロンドンの風景の変化をいろいろピックアップしてみました。
観光ガイドにも必ず掲載されている屋外市場のバラ・マーケット。
こういった海外の観光客に人気の場所は特に人が少ないのかも。出店の出展数が少ない日に訪れたのもありますが、出店が以前の半分以下の印象です。
どのお店も並ばずにすぐに買えます。マーケット側としては、購入したらすぐに市場を立ち去ってほしいとのことで、飲食ブースも撤去されていました。
食べ歩きが売りの場所なのに、食べ歩きが推奨されない場所になってしまいました…。
同じく大人気観光地コヴェント・ガーデン。いつもならアーケードは賑わい、外ではパフォーマンスに人だかりができていますが、雨のせいもあってか寂しい場所に…。
テラス席やアーケードのレストランにだけ人がいて、他のブランド店やお土産屋さんにはほとんどお客がいませんでした。
これではお店を開いても収入があるのか微妙です。
電車にも変化が
公共交通機関は感染するリスクが高いという事でかなり敬遠されがちなのもあり、どの駅も空いています。
金融の中心地、カナリーワーフですらこの人気のなさ。
広告に「ソーシャルディスタンシング(Social Distancing)」を呼びかける文字が飛び交うものの、これだけ空いていればなにもしなくても距離があけられるというもの。
──巨大なコンクリートの建物内、感染防止を訴えかける巨大な電子公告版の下を、マスクを着けた人々がみな一様に、速足で歩いていた。
とか書くとディストピア小説っぽい。
どこか映画「ブレードランナー」の荒廃した風景すら思い出させます。
ロンドンの地下鉄には巨大広告があちこちに貼られていて、グラフティーっぽくて好きなのですが、乗客が少ない所為か、構内の広告がほとんど無くなっていました。
あるとしてもコロナ関連のマスクや借金の広告か、政府がワクチン接種を呼びかけるものだけ。
駅の自販機ではマスクと消毒液が販売されるようになりました。
電車の中ではマスク着用義務が課されているため、忘れた人向けなのでしょうか?
それにしても、飲料水とマスクが並行して売られる日が来るとはね…。
とにかく、どこも人気が少なくて、ある意味、今までで見たことないロンドンを見ている印象です。
4月にお店の規制が解除される前、ロックダウンが厳しかったころは更に静かだったと思われます。
どのお店も空いていたので、店内をゆっくりと回れたのは個人的に助かりましたが、このままではとても経営が立ち行かないでしょうし、もう少し活気が戻ってくことを切に願います。
ちなみに、せっかく中心部に行ったので、「ロンドングラフィックセンター」という画材屋さんにも立ち寄ってきました。
大手の画材メーカーを幅広く取り扱っているしているお店で、ここに行けば大体必要なものはカバーできる印象です。
画材や文房具屋さんをうろつくのが好きなので、久ぶりダラダラできて楽しかったです。ついつい新しい画材を買い込んでしまいました(笑)
使ってみてよかったものはそのうちこのブログにレビューを掲載しようかと思います。
半年ぶりにロンドン中心部をブラブラとうろつきましたが、自由に外を出歩けるって素晴らしいですね!
まだまだ規制だらけですが、冬の厳しいロックダウンを経験した後だと、普通のお店に入れるだけでもう何もかも自由になった気分です。
このままワクチン接種と感染率のコントロールがうまくいけば、次の規制解除は5月17日になります。
そこまでいくと室内のレストランや美術館、映画館などが営業可能になります。どうか予定通り規制解除が進みますように!
イースターといえばホットクロスバン
今年は4月4日の日曜日がイースター(復活祭)(Easter Sunday)の日曜日でした。
イースターの前後の土日、4月2日(Good Fraiday)と5日(Easeter Monday)は祝日となるので、多くの人は土日を合わせて4連休になりました。
学校もお休みになるので、このタイミングで有給とまとめて1週間休む人も多いです。
ただこのイースターの日曜日は毎年変わります。
「春分の日の後の最初の満月の次の日曜日」がイースターのため、3月中にイースターが来る年もあれば、4月後半がイースター休暇になる年もあります。
2019年は3月24日、2020年は4月12日がイースターの日曜日でした。
毎年連休の日が大幅に変わるなんて、日本だったらゴールデンウィークが4月中旬に来たり、5月下旬に移動するようなもの。
日本人の感覚的にはあり得ない大型連休だなと毎年思っています。
キリスト教でない私にとってはクリスマスよりさらに馴染みのない季節行事で、基本的には「連休だからありがたい」くらいの感覚です。
また今年はコロナのロックダウン関係で、生活必需品以外のお店、レストランは閉鎖、交流は2世帯までと様々な規制がかかっているので、休暇らしく旅行に出かけることはできません。
イースター前に規制を緩めたら、今までのロックダウンで抑制されていた分、人々が出かけまくってしまうのを懸念して、わざとイースター中は規制を厳し目にしたままだったものと思われます。
ある意味、政府は人々の心理をよく理解してコロナの対策をしているともいえるのかもしれません。
話をイースターに戻しますが、この時期になると卵型のチョコレートが大量に売り出される話を以前記事にしましたが、他にもイースターらしい食べ物があります。
その中の一つに「ホットクロスバン(Hot cross bun)」という菓子パンがあります。
ドライレーズンが入っており、日本では「葡萄パン」と呼ばれているものとほぼ一緒、上にアイシングで十字が入っているのが特徴です。
常温で食べても、トーストしてバターをたっぷり塗って食べてもおいしい!
一応この十字はキリスト教由来のもので、イースターの金曜日(Good Fraiday)にホットクロスバンを食べる風習があるそうです。
一番スタンダードなのはレーズン味
イースター関連の食べものですが、菓子パンとして食べやすいためか人気のパンなので一年中スーパーで手に入れることができます。
この時期はこの基本の葡萄味に加えて、様々なバリエーションのホットクロスバンが各社から販売されます。
イギリスは食べ物も飲み物も、季節限定フレーバーな食べ物って日本ほど熱心にありません。
その中でもホットクロスバンは結構いろいろな種類が出るのでこの時期になるといろいろな味を食べ比べています。
上記のレーズン味以外にも、今年食べたホットクロスバンをいくつか紹介します。
ルバーブ&カスタード
ドイツ系格安スーパーALDIはパンの種類が豊富で、ホットクロスバンズも毎年バリエーションが豊富。
ルバーブ&カスタードは毎年一度は買って食べています。
日本ではあまりなじみのないルバーブですが、甘いセロリみたいな感じでしょうか、カスタードと相まって甘い食パンみたいな味です。
チリ&チーズ
チリ&チーズはマークス&スペンサーでも同じ味の物が入手可。
こっちは練りこまれたチリがピリッと辛いホットクロスバンズ。
もう葡萄パンの原型はない(笑)
私は半分に切ってトーストし、更に間にチーズを挟んで食べるのがお気に入り。
チョコレート
今年期待の大型新人(新作)、一部のネット界隈では大ヒット商品のチョコレート味です。
パン生地にチョコが練りこまれ、更にホワイトチョコとミルクチョコの欠片が入っているチョコ尽くしの一品。
もうホットクロスバンズとはいったいなんなのか、上に十字がついていればいいのか、と突っ込んだらキリがない。
味はチョコパンですね、トーストするとチョコの欠片が半分溶けだしてたまりません。
おいしかったので来年も販売されるよう願っています。
他にもまだまだたくさん……
この他にもイギリスの国民的ペースト「マーマイト」とコラボしたマーマイトホットクロスバンズを食べましたが、うっかり写真を撮り損ねてしまいました。
私はマーマイト単品は苦手で食べれませんが、このパンはしょっぱめの味で、チーズと合わせて食べるとおいしかったです。
今年は食べきれなかったのですが、他にもまだまだ種類はあり:
ブルーベリー
リンゴ
塩キャラメル&チョコ
ラズベリー&ホワイトチョコ
ハチミツ
などなど…スーパーで見るだけでも様々な種類があります。
日本だったらここに抹茶味と桜味のホットクロスバンが出てそう。
色々な味があって楽しいし、嬉しいのですが、
「ホットクロスバンでこんなにバリエーションをつくれるなら、日ごろもっと期間限定の菓子パンとか出してよ!」
と季節限定フレーバー大好き人間としては言いたくもなる…かも?
軽い食べ口なのでおやつとしてももってこいですし、ある意味、とてもイギリスらしいイギリスごはんなので、イースター前後に旅行する人はぜひぜひ一度トライしてみてほしいです!
ロックダウン中に読んだ/観た/挫折したもの
3月27日はサマータイムの切り替わりの日、そして、29日月曜日から、また一段階ロックダウンの規制が解除されました。
今度の規制解除から、屋外で6人まで、もしくは2世帯で交流することができます。
サマータイムで夕方7時まで明るくなったのもあり、公園の芝生にはあちこちでプチピクニックが開かれていました。
さて、前回の記事に引き続いて、ここ一年のロックダウン中の生活について振り返ってみたいと思います。
今回はロックダウン中に見たり読んだりしたものをピックアップしてみました。
- 買ったけど読んでいない本: カミュ『ペスト』
- SFの小論文: ジェイムズ・P・ホーガン『巨人たちの星シリーズ』
- イギリスが舞台のアニメ: 『魔法使いの嫁』
- 帰国できない代わりに日本の景色を観ていたアニメ: 『蟲師』
- 貴方が報道部の編集責任者、情報を流して世俗を操る?『Headliner』
- まとめ:現実から離れたフィクションの方がハマれたかな…?
買ったけど読んでいない本: カミュ『ペスト』
イギリスで一度目のロックダウンが始まった頃に購入したものの、それ以来1章で止まっています。
2020年3月当時、世界中各国がロックダウンしていくなか、多くの人が手に取ったと聞き、私も「文学の中に何か未来の希望が見えるかもしれない…」と期待して購入。
実際に自分が陥っている状況と、小説の状況があまりにも似すぎているため「現実でこんなに辛い目にあってるのにわざわざ小説でも追体験する必要ってある?」と感じてしまい、途中で読むのを断念しました。
今の方が状況を客観的に受け取れるので、小説も読み進められるかもしれません。
いつか読み終えたいと思っています。
SFの小論文: ジェイムズ・P・ホーガン『巨人たちの星シリーズ』
古典的SFの傑作『星を継ぐもの』と続編2作『ガニメデの優しい巨人』『巨人たちの星』を読みました。
こちらはSF宇宙モノで、カミュのペストと違い、現実世界から完全に離れている未来のお話です。
ロックダウン初期は現実のドラマとか映画を何ひとつ観る気分にならない日が続いていて、こういう現実とは離れた世界の物語を読んでいた方が気が楽でした。
特に『星を継ぐもの』は様々の論文のまとめ論文のような読み応えがありました。
続編2作、『ガニメデの優しい巨人』『巨人たちの星』は同じ登場人物達の性格がより掘り下げられていて、人間関係(宇宙人関係)も呼んでいて楽しかったです。
作中では、世界では戦争が無くなり、宇宙進出のために各国が協力する統合政府ができていたり、登場する宇宙人がとても温和な種族だったり、お気楽なまでに人類の未来への希望が描かれているのも微笑ましくてよかったです。
4作目の『内なる宇宙』も今後読む予定です。
イギリスが舞台のアニメ: 『魔法使いの嫁』
主人公での少女、チセが異形の魔法使いエリアスの弟子(兼嫁)として迎えられて、イギリスを主な舞台に魔法使いの暮らしをしたり、様々な人や妖精と関わっていく、というハリーポッターが好きな人には好きなタイプのアニメですが…
特筆すべきはそう、イギリスの風景がちゃんと描かれているアニメです!
イギリスに住んでいる風景オタクの私も満足のいく一本。
原作の漫画は未読なので、どこまでがアニメスタッフのリサーチのたまものなのか不明ですが、とにかく季節の描写が細かくて美しいので、それだけでも観る価値がありました。
春にはブルーベルが咲き誇り、夏には庭の花が満開で、秋の夕暮れ、冬の寒そうな石垣の道など、季節の描写が分かる人にはちゃんと分かるディテールで描かれています。
私が個人的に嬉しかったのは、イギリスの庭でよく見かける、どこにでも生えて暴走するせいでさほど人気も高くない植物ことBuddlejaが、背景で一瞬映りこんだ時は感動しました。
こういう植物です↓
ちなみにBuddlejaは蝶々などをよく寄せるので、動物保護の観点から言えばとても大事な植物です。
帰国できない代わりに日本の景色を観ていたアニメ: 『蟲師』
魔法使いの嫁がイギリスを舞台にしたファンタジーだとしたら蟲師は架空の時代の日本を舞台にした物語。
『蟲』と呼ばれる異形の存在と、それへの対応を生業とする『蟲師』である主人公ギンコを軸に、人々や自然の美しさや恐ろしさを描いてく作品です。
原作コミックもアニメも何度か観てますが、また配信していたのでついつい観てしまいました。
こちらも映像の美しさがたまりません。日本の山奥の湿った空気感や、海沿いの潮っぽい風を画面から感じます。
日本に帰れない分、これで日本の景色や季節感を摂取していました。
貴方が報道部の編集責任者、情報を流して世俗を操る?『Headliner』
ニンテンドーswitchやPCなどで販売されているゲーム。
プレイヤーは架空の国の新聞社の編集責任者となり、様々な視点の記事を取捨選択して世間に送り出すことで、世間がメディアによってどのように世論を形成していくか見守るゲームです。
こちらもカミュのペストと同じく、買ったはいいけど途中で挫折しているゲームです。
これも妙にリアルな世界観で、娯楽として没頭しきれなかったので。
「移民として働き、頑張っているけど、周囲からやや差別的な扱いを受けてしまう職場の同僚」、「外資系資本の多国籍企業の大手スーパーにお客をとられてしまう地元の小売店の店主」などなど、社会を反映した小ネタがあちこちにあり、関心していたのですが、一番驚いたのは、国外から原因不明の病が流行してしまうエピソード。
最初に発売されたのは2018年なので、コロナの事を予想してたと思えないのですが、手洗いの徹底や、咳をすると嫌がれる描写があったりと、ちょうど1月のロックダウンが厳しい時期に始めたので、遊びと割り切るには少し厳しくて、それ以来放置してあります。
もう少し落ち着いたらまた再開したいと思います。
まとめ:現実から離れたフィクションの方がハマれたかな…?
上記で紹介したものは一部ですが、こうして読んだものや観たもの、遊んだゲームを振り返ってみると、ファンタジーやSFといった架空世界のエンターテイメントの方がエンジョイできてたようです。
しかしどこか現実の、特にコロナを彷彿とさせるものは素直に楽しめず、敬遠してしまった気がします。
同じような理由で現代を舞台にした実写ドラマなんかも、一時期は観てて違和感を感じるというか、「ちょっと前まではマスクなしでこんなに人と距離が近かったんだよね」という現実との微妙な乖離が気になっていたことがありました。
それだけロックダウン中は精神が過敏になっていたんですね。
今年は昨年よりもう少し気兼ねなくエンターテイメントを鑑賞できるようになってほしいです。
ロックダウンから早一年
今からちょうど一年前の2020年3月23日、イギリスで一度目のロックダウンが始まりました。
一年たった今でもその日のことはよく覚えています。
ロックダウンが正式に宣言されたのは23日月曜日夜。
夜にボリス・ジョンソン首相がBBCの番組で記者会見を行い、ロックダウンを宣言しました。
イギリスでは、3月中旬頃からすでに学校やレストランの閉鎖が先行していましたが、国全体のロックダウンが始まったのはこの日から。
今でこそ「ロックダウン」という単語が日常化しましたが、当時はまだ未知の概念でした。
正直、記者会見を一度聞いただけではどうなるのかよく分からなくて、隣で聞いていた大家さんに「つまり何が起きるの?」と聞いた気がします。
23日の記憶
その後、1回目のロックダウンは3月23日夜から6月15日まで続きました。
記者会見を聞いた翌日3月24日は、リモートワークのためにどうしても必要な機材を取りに行くためにオフィスへ出勤しました。
いつもは混んでいる道路の交通量が激減して、ポストアポカリプス映画の登場人物になった気分でした。
当時の手帳の24日(火曜)の欄には以下のようなことが書き記してあります。
「火曜は急遽オフィスに行って家で仕事するために道具を持って帰る。
一番近い感覚は卒業の日(式ではない)。
いままであった当たり前がふっとんでくような、そんなかなしさ。」
ロックダウン宣言前からイギリスでもコロナの陽性者数や入院患者数が増加し始めていましたが、23日のロックダウン宣言で、名実ともに今までの世界がひっくり返った印象だったと思います。
当時、医療現場への資材が圧倒的に不足しており、一般向けのマスクや除菌ジェルは全く手に入りませんでした。
ごく一部の人がマスクを着けているのをスーパーで見かけましたが、ほとんどの人は口も覆わずに、距離だけ取っている感じでした。
というか、コロナの前は、イギリスでは風邪を引いていても、くしゃみが止まらなくてもマスクを着けない文化だったので、マスクをすること自体があまり好ましく思われていませんでした。
コロナが流行る以前に、普通の風邪をひき、咳が止まらない日があり、職場にマスクを着けて行ったら、イギリス人の上司から「アジア人はマスクを着ければ風邪が止められるとか思っている」みたいなことを言われて茶化されたことを覚えています。
まあ、アジア人へのステレオタイプが強い上司だったので、私が「日本人っぽい(とイギリス人が考えている)」行動ことをする度に茶化す人だったんですけど……。
マスクと社会的距離ももう今となってはすっかり日常化していて、この記事を書くまでは、コロナ前のヨーロッパのマスク拒絶反応を忘れかけていました。
記憶の忘却ってあっという間です。
ロックダウン中の記録としてお勧めの本
ヤマザキマリさんの「立ち止まって考える」という本は「国境をまたにかけている日本人がロックダウン中に感じたこと」を参照するのにお勧めの本です。
「テルマエ・ロマエ」を描いた方としてご存知の方もいるのではないでしょうか。
ヤマザキマリさんはイタリア人の家族がいて、日本とイタリアの間を年中移動しながら生活していましたが、コロナのロックダウンで日本にずっと滞在することになり、その間に考えたことをまとめた本になります。
私も、イギリスと日本をまたいで生活していたのが、イギリスに閉じ込められてしまったので、越境する暮らしの部分で少し似ているところがあり、心境的に一番読みやすかった本でした。
イタリアとイギリスではコロナの流行のしかたや政策も異なるので、一概には同じと言えませんが、当時のヨーロッパ全体のマスク着用の拒否感の背景の解説などは興味深かったです。
新書サイズで読みやすいので、興味がある方はお読みください。
これからもこのコロナについての本はたくさん発行されるとは思いますが、流行の真っただ中で、先の分からない状況で書かれた資料として、今後も参考になるのではないでしょうか。
2021年の3月23日現在
1年前のロックダウンの日に比べると、現在は、ワクチンが部分的とはいえ機能し始めているし、社会的距離をとったり感染対策も当時より徹底しているので、大分状況が変わりましたね。
私の家の大家さんも先日1回目のワクチンを接種してきました。
(3月22日現在イギリスでは50代以上の人や重症化のリスクが高い人、医療関係者などはワクチンが接種可能)
摂取してから一週間経過しましたが、とくに副作用もなく、元気そうにしています。
この先どうなるかまだ誰にも分からないですが、私も今この瞬間感じたことを、このブログに書き留めていきたいです。
※2021年3月24日:誤字修正しました
10年に一度のイギリス国勢調査
2021年はイギリスで10年に一度の国勢調査が開かれる年でもあります。
前回の国勢調査は2011年、前々回は2001年。
私も国勢調査に回答する機会があったので、今回は参加してみて感じたことを書きました。
イギリスの国勢調査事情
イングランドとウェールズではOffice for National Statistics(英国統計局)(略してONSと表記される)というところが国勢調査を実施しています。
この英国統計局は他にもさまざまな統計データを収集、解析しています。
一般の人々が利用できるように公開しているデータも多くあります。
ランドスケープデザインを学んでいた学生時代は、課題として与えられた地域や場所の基本的なデータを手に入れるために英国統計局のサイトにアクセスしたこともありました。
現在コロナウイルス(Covid-19)の、日々の感染者数や地域別の傾向を解析・発表しているのも、この英国統計局になります。
今回の国勢調査は、英国籍あるなしに関係なく、イングランドとウェールズに住んでいるすべての人が対象です。イギリスの滞在が3ヵ月未満の人だけは回答不要です。
※スコットランドと北アイルランドは、英国統計局ではない別団体が統計を取っているようです。
基本はオンラインで回答しますが、希望者には紙での回答フォームを送ってくれます。基本は英語もしくはウェールズ語で回答しなくてはいけません。
英語が読めない回答者の場合、希望者には質問内容をそれぞれの言語で訳したパンフレットを送ってくれます。
私は英語で回答してしまいましたが、後で探したら日本語訳のパンフレットをオンラインで見つけました。
正確なニュアンスを知るためにに参照してもよかったな~、と少し後悔。
日本語話者ってイギリスの総人口のなかではほんの豆粒みたいな割合だけど、言語サポートがあると、「国から存在を認識されているんだな」と少しだけ嬉しくもありますね!
英国統計局による日本語訳のリーフレットはこちら↓
https://census.gov.uk/assets/Japanese-Household-Questionnaire-guidance-booklet.pdf
質問内容が日本の国勢調査と違うところもあったので、比べてみるとおもしろいかもしれません。
興味深かった質問
私は大家さんが住んでいる家の一部分を借りて暮らしているので、「世帯」に関する質問は大家さんが答えました。
私自身はその世帯に暮らしている「個人」の回答を自分で行いました。
個人に問われている質問でいくつか興味深いものがあったので紹介しようと思います。
「性的指向」と「性自認」を問う欄がある
最初に出生時に登録された性別「男性/女性」と問う質問があり、16歳以上の人はさらに「性的指向」と「性自認」の質問がされます。
「さすがは同性パートナーシップが認められている国イギリス!質問要綱が細かい!」と私は関心したのですが、どうやらこの二つの質問事項は今回の調査で初めて追加されたとのこと。
(参考:APF)
2021年今日まで、「性的指向」と「性自認」に関する公式な統計が存在しなかったんですね。統計上はLGBT+は存在していない扱いだったわけです。
地域や政治・社会・経済統計といった生活実態を把握することで、現状の把握や、今後必要とされるサービス提案に役立てたい考えのようです。
他の情報と合わせてどんな実態が浮き彫りになるのか、興味深くあります。
ちなみに、「性的指向」と「性自認」への回答は任意とされているので、答えたくない場合はスキップできます。
法律上の婚姻と市民(同性)パートナーシップ
イギリスは市民(同性)パートナーシップが認められています。なので婚姻とパートナーシップの状況を問う項目では、以下の8項目から答えることになります。
- 一度も結婚したことも、一度もパートナーシップの登録をしたことがない
- 既婚
- 登録した市民(同性)パートナーがいる
- 別居中だが、法律上はまだ結婚している
- 別居中だが、法律上はまだ市民(同性)パートナーがいる
- 離婚以前は市民(同性)パートナーがいたが、現在は法的に解消している
- 死別
- 登録した市民(同性)パートナーと死別
「結婚」と「市民パートナー」が違うのだから、そのあとの「離婚/市民パートナーの解消」「結婚しているが別居中/市民パートナーがいるが別居中」「婚姻した相手と死別/登録した市民パートナーと死別」はそれぞれ異なる扱いなんですね。
勉強不足なので、なんとなく頭の中では結婚と市民パートナーを登録した後は同じものだと認識していました……。
まだまだ理解が足りないと、項目をみて気がつかされました。
貴方は「イギリス人?」アイデンティティを問うもの
「あなたの国民意識をどう表現しますか?(What would you describe your national identiy?)」という質問。
回答欄の選択肢は
イギリス人 (British)
イングランド人 (English)
スコットランド人 (Scottish)
北アイルランド人 (Nortern Irish)
その他-自由回答 (Other)
の六択です。
イギリス人 (British)とそれぞれの国の国民意識が分かれているのもイギリスらしいですね。
普段の日常会話では「イギリス人」を自称する人ってあまり聞かない印象です。もっとグローバルな場で他の国の人々と交流すると「イギリス人」と名乗るのかもしれませんが。
イングランドに住んでいると「イングランド人」って自称をよく聞きますし、スコットランドから来た人は「スコットランド人」って言い分ているので、自分を「イギリス人」と考える人ってどれくらいいるのでしょう…?
「意識」を問う項目なので「私はもうイギリス人だ!」と思っているなら、私自身も「イギリス人」か「イングランド人」と回答してもよかったのですが、なかなかそういう気分になれませんでした。
イギリスの大学教育を受け、医療や市民サービスに登録し、税金を支払い、働き、同じコロナの影響を受け、同じ法律を守っていて、イギリス人と同じ屋根の下で暮らすし、生活はかなりイギリス式に染まってきています。
人生の何分の1はイギリスで過ごしているのに、それでもまだ「私はイギリス人/イングランド人だ!」とは認識する気持ちにならないんですよね。
やっぱり幼少時に育った国や環境が意識のベースになるのか、それともこの気持ちは、日本よりイギリスに長く住んでいれば変わるものなのか、今はまだ分かりません。
かといって「アイデンティティは100%日本人」と断言するには、ここ数年日本の現代的意識から離れてきてイギリス式に染まっている自分がいるのも事実です。
回答欄がもっと長ければ「4分の1イギリス人で3分の4は日本人です」と答えたかったかもしれません。
統計結果とランドスケープとの関わり
今回の国勢調査の締め切りは3月21日となっています。
データを収集して最終的なレポートが発行されるまでには、まだしばらくかかると思いますが、そこにどんな情勢が描かれるのか、興味深くあります。
というのもランドスケープ業界も、統計情報を参考にして都市計画を立てたり、地理情報と人口統計を組み合わせて、未来のランドスケープの在り方を考えるわけです。
例えば、いろいろなエスニックグループの割合が高いエリアだったら、マイノリティのエスニックグループがコミュニティとして参画しやすくなるような都市農園を配置したりします。
仮にもしLGBT+の人の割合が高い地区が分かれば、それを考慮して新しい計画ができたりするかもしれません。
今はまだ、どんな要素が影響を与えるか分かりません。
ただ言えるのは、統計上で存在を可視化されないと現状を把握することが難しいのです。
なので質問内容と、回答できる項目の選択肢はとても大事なものですよね。
統計の結果も今後見守っていきたいと思います。
春の準備とイースター
3月中旬ですね。
今回は3月に入って起きた小さめの日々のニュースをお送りします。
ロックダウンの規制緩和
イングランドでは今週月曜、3月8日からロックダウンが一段階緩和されました。
大学や小中学校の登校が再開され、別世帯の人と一人までなら外でピクニックしたりお茶を飲むことが許可されました。(それ以前は外で別世帯の人と会うのはあくまで用事のためで、ピクニックなどは一応禁止されていたのです)
その他の規制はまだまだ実施中なので、学校に行ってない身としてはあまり規制が緩んだ実感がありません。
登校時間に道路沿いを歩くと、送り迎えの車で道路の交通量が増えた感じがする……くらい?
まだ「Stay at Home」の方針は残っており、必要不可欠な出勤や買い物、一日の運動以外は外出を控えなければいけないことになっています。
予定通りに進めば、3月29日から屋外のスポーツ施設が再開、6人まで屋外で社交が可能となるので、本格的にロックダウンが緩むのは、もう半月先になります。
賑わいが戻るのはあともう少しですね……。
春のガーデニング
ただ、春になってきて日照時間も伸び、温かくなったことで、どこもかしこも春の庭に向けての準備が本格的に始まりました。
これは玄関に飾るように作った春の寄せ植え。
イギリスでもパンジーは春の花として重宝されます。
イースターチョコ
毎年3月~4月はイースター休暇があります。
祝日は毎年変動しますが、今年は4月2日~5日が連休になります。
クリスマスが終わるとスーパーはイースターのグッツを陳列しはじめますが、その品ぞろえがピークに達するのはイースター直前のこのタイミングです。
どれくらい力が入っているかと言えば、大きいスーパーの棚一列は全てイースターのチョコで埋まるくらい。
この列の棚は、端から端までイースターコーナー。
大手菓子メーカーがこぞってこの時期に売り出すイースターエッグたち。これらはみな30cmくらいあります。
通常卵型チョコの中身は空洞になっていますが、中にはチョコバーが入っているものもあります。
みんなだいたいこの時期くらいから買い始めて、しばらく家に飾っておく気がします。
ウサギ型のチョコも定番です。ピーターラビットのもあります。
ウサギ型のチョコは、見た目はかわいく、飾っておくのに丁度いいのですが、中身はプレーンなチョコなことが多いので、味に変化がない……(笑)
正直、個人的にはクリスマスのお菓子の方が種類も味もバラエティに富んでいて好きなのですが、見ている分には楽しいのでこの時期になると、ついふらふらとイースターコーナーを覗いています。
大きくて装飾が綺麗なチョコとかは惹かれますが、いかんせん30cmもあるチョコは一人では持て余してしがち。
小さめでかわいいチョコが見つかったら何か一つくらいは買おうかな~。