風景と物語

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ロックダウンから早一年

今からちょうど一年前の2020年3月23日、イギリスで一度目のロックダウンが始まりました。

 

一年たった今でもその日のことはよく覚えています。

ロックダウンが正式に宣言されたのは23日月曜日夜。

夜にボリス・ジョンソン首相がBBCの番組で記者会見を行い、ロックダウンを宣言しました。

イギリスでは、3月中旬頃からすでに学校やレストランの閉鎖が先行していましたが、国全体のロックダウンが始まったのはこの日から。

今でこそ「ロックダウン」という単語が日常化しましたが、当時はまだ未知の概念でした。

正直、記者会見を一度聞いただけではどうなるのかよく分からなくて、隣で聞いていた大家さんに「つまり何が起きるの?」と聞いた気がします。

 

 

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3月13日にどうしても用事があってロンドン中心部に行ったときの写真。

この頃にはもう人が出かけるのを控え始めていた気もする。

 

23日の記憶

その後、1回目のロックダウンは3月23日夜から6月15日まで続きました。

記者会見を聞いた翌日3月24日は、リモートワークのためにどうしても必要な機材を取りに行くためにオフィスへ出勤しました。

いつもは混んでいる道路の交通量が激減して、ポストアポカリプス映画の登場人物になった気分でした。

 

当時の手帳の24日(火曜)の欄には以下のようなことが書き記してあります。

 

「火曜は急遽オフィスに行って家で仕事するために道具を持って帰る。

一番近い感覚は卒業の日(式ではない)。

いままであった当たり前がふっとんでくような、そんなかなしさ。」

 

ロックダウン宣言前からイギリスでもコロナの陽性者数や入院患者数が増加し始めていましたが、23日のロックダウン宣言で、名実ともに今までの世界がひっくり返った印象だったと思います。

 

当時、医療現場への資材が圧倒的に不足しており、一般向けのマスクや除菌ジェルは全く手に入りませんでした。

ごく一部の人がマスクを着けているのをスーパーで見かけましたが、ほとんどの人は口も覆わずに、距離だけ取っている感じでした。

というか、コロナの前は、イギリスでは風邪を引いていても、くしゃみが止まらなくてもマスクを着けない文化だったので、マスクをすること自体があまり好ましく思われていませんでした。

コロナが流行る以前に、普通の風邪をひき、咳が止まらない日があり、職場にマスクを着けて行ったら、イギリス人の上司から「アジア人はマスクを着ければ風邪が止められるとか思っている」みたいなことを言われて茶化されたことを覚えています。

まあ、アジア人へのステレオタイプが強い上司だったので、私が「日本人っぽい(とイギリス人が考えている)」行動ことをする度に茶化す人だったんですけど……。

 

マスクと社会的距離ももう今となってはすっかり日常化していて、この記事を書くまでは、コロナ前のヨーロッパのマスク拒絶反応を忘れかけていました。

 

記憶の忘却ってあっという間です。

 

 

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3月のどこかでロックダウンが始まると噂はされていたので、

当時はスーパーで買い占めが起きました。

数日しかもたないようなお総菜は残っていることがありましたが、

保存の効く食品や冷凍可能な肉製品の棚はすっかり空に。

 

ロックダウン中の記録としてお勧めの本

ヤマザキマリさんの「立ち止まって考える」という本は「国境をまたにかけている日本人がロックダウン中に感じたこと」を参照するのにお勧めの本です。

 

テルマエ・ロマエ」を描いた方としてご存知の方もいるのではないでしょうか。

ヤマザキマリさんはイタリア人の家族がいて、日本とイタリアの間を年中移動しながら生活していましたが、コロナのロックダウンで日本にずっと滞在することになり、その間に考えたことをまとめた本になります。

私も、イギリスと日本をまたいで生活していたのが、イギリスに閉じ込められてしまったので、越境する暮らしの部分で少し似ているところがあり、心境的に一番読みやすかった本でした。

イタリアとイギリスではコロナの流行のしかたや政策も異なるので、一概には同じと言えませんが、当時のヨーロッパ全体のマスク着用の拒否感の背景の解説などは興味深かったです。

新書サイズで読みやすいので、興味がある方はお読みください。

 

これからもこのコロナについての本はたくさん発行されるとは思いますが、流行の真っただ中で、先の分からない状況で書かれた資料として、今後も参考になるのではないでしょうか。

 

 

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ロックダウン当初は特に国民保険サービス(NHS)が圧迫されていたので、感謝の気持ちを伝える張り紙や路上の文字をよく見かけた。

 

2021年の3月23日現在

1年前のロックダウンの日に比べると、現在は、ワクチンが部分的とはいえ機能し始めているし、社会的距離をとったり感染対策も当時より徹底しているので、大分状況が変わりましたね。

私の家の大家さんも先日1回目のワクチンを接種してきました。

(3月22日現在イギリスでは50代以上の人や重症化のリスクが高い人、医療関係者などはワクチンが接種可能)

摂取してから一週間経過しましたが、とくに副作用もなく、元気そうにしています。

 

この先どうなるかまだ誰にも分からないですが、私も今この瞬間感じたことを、このブログに書き留めていきたいです。

 

 

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イギリスの接触確認アプリ(日本のCOCOAみたいなもの)

住んでいるところの郵便番号のエリアに今どんな規制があるかも表示される
今は全国一律「National Lockdown」状態。

 

 

 

 

※2021年3月24日:誤字修正しました

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