こんにちは!
修士を卒業して以来更新が途絶えていたのでお久しぶりです。
仕事の方は無事に試用期間も通過し、なんとか続けられています。
修士課程で勉強していた頃よりも、ワークとライフのバランスが取れていて、今の所はこの会社で働いていきたいなと考えています。
今回は仕事の話はひとまずおいておいて、数年ぶりのチェルシーフラワーショウ参加についての日記です。
チェルシーフラワーショウとは?
チェルシーフラワーショウとはロンドンで毎年5月に開催される、ガーデニングと園芸関係の展示をするショーイベントです。
数あるイギリスのフラワーショウの中では業界、一般共に最も有名なものになります。
このイベントを主催しているのは「王立園芸協会(Royal Horticultural Society【RHS】)」と呼ばれる慈善団体で、イギリス国内外でガーデニングを奨励しています。
チェルシーフラワーショウには、イギリスに留学し始めたときから一般参加、もしくはボランティアとしてほぼ毎年参加していました。
過去数年は、コロナによる中止や、参加人数制限でチケットが手に入れられず参加できていなかったので、今年は約4年ぶりの一般参加となりました。
フラワーショウの目玉 ショーガーデン
チェルシーの一番の目玉と言ってもいいものは、ガーデンと呼ばれる、ショウのためにその場に一時的に作られた数メートル四方の小さな庭があります。
ガーデンは有名なガーデンデザイナーやランドスケープアーキテクトがデザインし、経験と技術のある施工会社が会場に組み立てるもので、完成させるには経験と高い技術が要求されます。
また、チェルシーフラワーショウは、その当時の最新の園芸品種やガーデニングのアイディアを提案する場でもあり、長年にわたってみていると、イギリスにおけるガーデニングのトレンドの移り変わりを観察することができます。
ファッションにおけるパリコレやミラノみたいなものと思ってもらえればいいかと思います。
文字だけ説明してもきりがないので、ここから先は、個人的に印象的だった庭の写真を一気に公開していきたいと思います。
ガーデンは、規模に応じて複数のカテゴリがあり、最も大きいサイズのガーデンをショーガーデンと呼びます。
写真だけ見ると、どこかの有名な庭のように見えますが、これ全て過去数週間で更地から組み立てられたものになります。
Haratio's Gardenは今年の「ベストショーガーデン」賞も受賞しました。
ショーガーデンは一番大きいものでは中に人が入ることもできます。
見る時間帯が合えば、中でBBCやテレビの取材の人が取材をしていることも。
これは同じガーデンを別角度から見たもの。
ガーデンごとにストーリーやテーマがあります。
これは「人々の話を聞く」ことがテーマになっており、入り口側は固くくて荒い植栽と素材、ガーデンの奥の方に進むにつれ、素材や植栽が柔らかくなっていくというもの。
チェルシーにも過去数年参加しているガーデンデザイナーSarah Priceがデザインした庭。
柔らかい色合いの植栽が特徴的です。
背景となる塗壁や石材はLocal Work Studioというランドスケープ関係の会社がコラボしたもので、既存の素材をリサイクルして再活用するプロジェクトに関わっています。
今年は植栽以外の建材の部分にリサイクル素材を用いるところが多かった印象です。
こちらはショーガーデンではありませんが、展示の1つ。
展示されている彫刻は、リサイクルした新聞紙のパルプとロンドンのあちこちから回収されたスクラップを用いたもの。
また、この写真に写っている花の多くは、イギリスの牧草地や公園でよく見られる植物達です。
私が記憶してる限り、以前のチェルシーではもっと園芸品種や珍しい種類の植物が多用されていたことが多く、こういうありふれた植物が多用されるようになったのは最近の傾向なのではないかと思います。
こちらは廃墟になった家の跡地を、自然がとってかわり、徐々に自然に飲み込まれていく過程をコンセプトにデザインしたガーデン。
素材は割れたレンガや瓦礫の山、植物にはもはや一般に雑草として認知されているタンポポなどが使われています。
写真からだとただの瓦礫の山に見えるかもしれませんが、実物は「ただの荒れ地」に見えすぎないように計算深く設計されています。
イギリスでは近年「見栄えのいい花ばかりでも殺虫剤や水を大量消費して手がかかる庭」から「ちょっとワイルドに見えても、野生動物や気候変動に対応できる自然に近しい庭」へとデザインの流行が変化しています。
チェルシーでも気候変動に対応したコンセプトの庭が随分と増えました。
先にも述べたように、チェルシーは最近の流行の発表の場でもあるので、「自然のありのままを愛でよう。人間中心の人間のためだけの庭は止めよう」というメッセージを発しているのが感じられます。
久しぶりに参加してみて
数年ぶりの参加となりましたが、毎年見てても、否、毎年観察しているからこそ分かる流行の変化や、各ガーデンや展示の技術の高さに感心している間にあっという間に1日が過ぎていきました。
数年前の私だったら、チェルシーとまでいかなくとも、他のフラワーショウに一度はデザイナーとして参加してみたいと思っていたのですが、今はランドスケープアーキテクトとしての仕事でたくさん学ぶことが多くそちらに集中したいので、ショーガーデンへの熱意は以前ほどないかもしれません。
今現在の関心はもう少し、実際に現場に建てられて使われる公共スペースや公園に興味が向いているので。
ただ、また数年後にもう少し実務経験を積んだらやっぱりショーにも興味がわいてくるかもしれません。
ランドスケープとガーデンの世界は奥が深いので、きっと少しずつ何かを知るたびに、気になる分野が少しずつ変わっていくのでしょう。
チェルシーの帰り道に、赤系と青系の石が用いられた石畳を見かけました。
私は思わずカメラを取り出し、写真に収めました。
2週間ほど前から、とあるプロジェクトで、現場に用いる石畳のデザインに関わっているためです。
でも石畳のデザインなんて今までしたことないし、何が「いい石畳」なのかもよくわからなくて、よさげな石畳を見かけると写真を撮ってしまいます。
週明けはこの写真を上司にみせて、もう少しデザインを煮詰める予定です。