先日、ロンドンのカニングタウン近くにある 「トリニティボイワーフ(Trinity Buoy Wharf)」 という、アート&カルチャーセンターへ行ってきました。
そもそもなぜこの場所を知ったかといえば、ロックダウン中に
「Landscape artist of the year」というテレビ番組の中で取り上げられていたからです。
この番組は公募で集めたアーティストが各回それぞれ6人、イギリスの各地に出向き、4時間でランドスケープの絵を一枚描き、優秀者が次のラウンドに進んでいくというものです。
お題となる場所は毎回異なり、ロンドンのオリンピックパークから自然あふれるチャートウェルまでバラエティに富み、Trinity Buoy Wharf はそんなお題の場所の一つでした。
Landscape artist of the year のサイト
歴史と概略
Trinity Buoy Wharfはテムズ川周辺で使われるブイや灯台船を製造したり保存、管理する場所として長らく使われてきた歴史があります。
「Buoy」は英語で「ブイ」、「Wharf」は「波止場」という意味です。
1988年に波止場としては閉鎖され、1998年から現在までTrinity Buoy Wharf Trustという団体が管理、運営しています。
敷地内には貸オフィス、アーティストへのアトリエや学校、カフェ、アートの展示などがあり、アートやカルチャーに関わるアクティビティを発信、促進している場所となっています。
川と川に挟まれた半島のような場所に位置しており、かつては半島全部が波止場として用いられていましたが、現在このエリアは住宅建築開発の真っ最中。
Trinity Buoy Wfarfに向かう途中の地区では高層マンションが大量に建てられていました。
歩き割った写真いろいろ
当日は近くのカニングタウン駅から徒歩で敷地へ向かいました。
Trinity Buoy Wfarfの入り口。隣の地区全体では高層住宅街を建築中で、工事音が響いていました。
イギリスは2021年現在でも深刻な住宅不足が続いているため、高層マンション回衣鉢をあちこちで見かけます。
写真の中で大きくと「Trinity Buoy Wfarf」と書いてある建物は、現在は4~11歳向けのプライマリースクールとして使われています。
入り口横にある建物は、元は倉庫だったもので、現在は[The Royal Drawing School」として様々な年齢の人にアートを教える教育施設として使われています。
私が滞在している間にも、建物からキャンバスを持った学生たちが、スケッチをするために出かけていきました。
隣の建物はバーのようなイベントスペースとして用いられているようでしたが、ロックダウンの関係か今はまだ閉鎖中の様子。
工業地帯にありがちなコンクリートの舗装とペンキも、建物とマッチしていておしゃれですね。
敷地内には元灯台もあります。中はアートの展示室となっているのですが、たまたま何かの撮影が行われていて、フィルムクルー以外立ち入り禁止になっていました。残念!
左側の青い建物は、2012年のロンドンオリンピックの際に放送スタジオとしてオリンピックパークで使われたものが解体され、ここに持ち込まれ再利用されています。貨物コンテナを模したもので、簡単に組み立てと分解がだそうです。今は貸しオフィスになっています。
こちらは既存の建物の隙間に建てられたンテナハウス。元波止場という土地の背景を生かして、クレーンのコンテナ風を使っています。
コンテナハウスの中は細かく仕切られていて、アーティストへの貸しスタジオとなっています。背景の高層住宅街建築のクレーンがコンテナとマッチしていていい感じ。
高層マンションを建てているので騒音が響き渡っていたのですが、工事現場特有の忙しさすらもこの空間の空気の一部でもある気がして、「この住宅街の開発が終わったら少し寂しいかも?」と私は思ってしまいました。
右手の長屋風の建物は1875年に建てられた「Proving House」と言って、テムズ川で使うブイの鎖の強度試験をする建物だったそうです。今はアートスタジオに。
左手の茶色い建物は、1952年に建てられ、現在はイングリッシュナショナルオペラ( English National Opera)の舞台装置や小道具をつくる工房として使用されています。
一見すると工場地帯に見える場所ですが、中身はそれぞれとってもアートな空間になっているわけですね。
新しい建物を立てなくても、内装だけ改装して再利用することで、土地柄や歴史を活かしています。
波止場なので、すぐ横はテムズ川です。船を改装して再利用しているものもあり、手前の「W」がついている船は「Knocker White」と呼ばれる引き船で、今はここで保存されています。
この船以外にも元灯台船やはしけ舟が岸壁のあちこちに係留されて、保存されています。
白い桟橋から続いている埠頭もTrinity Buoy Wfarfの一部として使用されているそうです。
写真で紹介した建物以外にも、元電気室やらボイラー室だった歴史的な建物が再利用され、更にその隙間にコンテナハウスやカフェといった新規の建物を敷き詰めて、密度の高い空間を作り出していました。
建物の写真をメインに紹介しましたが、敷地のあちこちに小さいアートインスタレーションや彫刻も飾ってあって、一つ一つ細かく見ていくのも楽しかったです。
ロックダウンされていない時は結婚式会場として貸し出していたり、ワークショップやイベントを多数開催しているとのことで、カルチャーの濃度が高いエリアとして発信しているようです。
Trinity Buoy Wfarfに隣接するエリア
Trinity Buoy Wfarfの隣接エリアにも過去の建物が再利用されていて、産業計の建築が好きな人は歩き回るのが楽しいかと。
更にその先には、歴史的なエリアから一変して、完全新規の高層マンション群が立ち並んでいます。こちらは隣り合わせの地区とは思えないくらいモダンです。
色合いや形がどことなく貨物のコンテナっぽいです。Trinity Buoy Wfarfのコンテナハウスと同じく、波止場だったことを意識してデザインしているのかもしれません。
職業柄、ビルよりランドスケープに目が行ってしまう(笑)。
歩道の雨水がそのまま植栽エリアへ流れ込むように、縁石に隙間が空いていますね。
自転車を止めるスタンドもモダンでスタイリッシュ。地面に落ちた影がまた素敵。
半日ほど滞在していましたが、建物や展示を見るだけで結構楽しめました。これからもっと注目される場所になりそうです。
ロックダウンが解除されて室内展示やイベントが再開されたらまた訪れてみたいです。
アクセス
最寄り駅は JubileeラインのCanning Town駅です。
駅から徒歩10分弱ぐらいで着きました。
参考