風景と物語

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ロックダウン中に読んだ/観た/挫折したもの

3月27日はサマータイムの切り替わりの日、そして、29日月曜日から、また一段階ロックダウンの規制が解除されました。

今度の規制解除から、屋外で6人まで、もしくは2世帯で交流することができます。

サマータイムで夕方7時まで明るくなったのもあり、公園の芝生にはあちこちでプチピクニックが開かれていました。

 

 

さて、前回の記事に引き続いて、ここ一年のロックダウン中の生活について振り返ってみたいと思います。

今回はロックダウン中に見たり読んだりしたものをピックアップしてみました。

 

 

 

買ったけど読んでいない本: カミュ『ペスト』

 

イギリスで一度目のロックダウンが始まった頃に購入したものの、それ以来1章で止まっています。

2020年3月当時、世界中各国がロックダウンしていくなか、多くの人が手に取ったと聞き、私も「文学の中に何か未来の希望が見えるかもしれない…」と期待して購入。

実際に自分が陥っている状況と、小説の状況があまりにも似すぎているため「現実でこんなに辛い目にあってるのにわざわざ小説でも追体験する必要ってある?」と感じてしまい、途中で読むのを断念しました。

今の方が状況を客観的に受け取れるので、小説も読み進められるかもしれません。

いつか読み終えたいと思っています。

 

 

 

SFの小論文: ジェイムズ・P・ホーガン『巨人たちの星シリーズ』

 

古典的SFの傑作『星を継ぐもの』と続編2作『ガニメデの優しい巨人』『巨人たちの星』を読みました。

こちらはSF宇宙モノで、カミュのペストと違い、現実世界から完全に離れている未来のお話です。

ロックダウン初期は現実のドラマとか映画を何ひとつ観る気分にならない日が続いていて、こういう現実とは離れた世界の物語を読んでいた方が気が楽でした。

特に『星を継ぐもの』は様々の論文のまとめ論文のような読み応えがありました。

続編2作、『ガニメデの優しい巨人』『巨人たちの星』は同じ登場人物達の性格がより掘り下げられていて、人間関係(宇宙人関係)も呼んでいて楽しかったです。

作中では、世界では戦争が無くなり、宇宙進出のために各国が協力する統合政府ができていたり、登場する宇宙人がとても温和な種族だったり、お気楽なまでに人類の未来への希望が描かれているのも微笑ましくてよかったです。

 

 

 

4作目の『内なる宇宙』も今後読む予定です。

 

 

 

イギリスが舞台のアニメ: 『魔法使いの嫁

mahoyome.jp

主人公での少女、チセが異形の魔法使いエリアスの弟子(兼嫁)として迎えられて、イギリスを主な舞台に魔法使いの暮らしをしたり、様々な人や妖精と関わっていく、というハリーポッターが好きな人には好きなタイプのアニメですが…

特筆すべきはそう、イギリスの風景がちゃんと描かれているアニメです!

イギリスに住んでいる風景オタクの私も満足のいく一本。

原作の漫画は未読なので、どこまでがアニメスタッフのリサーチのたまものなのか不明ですが、とにかく季節の描写が細かくて美しいので、それだけでも観る価値がありました。

春にはブルーベルが咲き誇り、夏には庭の花が満開で、秋の夕暮れ、冬の寒そうな石垣の道など、季節の描写が分かる人にはちゃんと分かるディテールで描かれています。

 

私が個人的に嬉しかったのは、イギリスの庭でよく見かける、どこにでも生えて暴走するせいでさほど人気も高くない植物ことBuddlejaが、背景で一瞬映りこんだ時は感動しました。

こういう植物です↓

www.rhs.org.uk

 ちなみにBuddlejaは蝶々などをよく寄せるので、動物保護の観点から言えばとても大事な植物です。

 

 

 

帰国できない代わりに日本の景色を観ていたアニメ: 『蟲師

www.mushishi-anime.com

魔法使いの嫁がイギリスを舞台にしたファンタジーだとしたら蟲師は架空の時代の日本を舞台にした物語。

『蟲』と呼ばれる異形の存在と、それへの対応を生業とする『蟲師』である主人公ギンコを軸に、人々や自然の美しさや恐ろしさを描いてく作品です。

原作コミックもアニメも何度か観てますが、また配信していたのでついつい観てしまいました。

こちらも映像の美しさがたまりません。日本の山奥の湿った空気感や、海沿いの潮っぽい風を画面から感じます。

 日本に帰れない分、これで日本の景色や季節感を摂取していました。

 

 

 

貴方が報道部の編集責任者、情報を流して世俗を操る?『Headliner』

chorusworldwide.com

ニンテンドーswitchやPCなどで販売されているゲーム。

プレイヤーは架空の国の新聞社の編集責任者となり、様々な視点の記事を取捨選択して世間に送り出すことで、世間がメディアによってどのように世論を形成していくか見守るゲームです。

こちらもカミュのペストと同じく、買ったはいいけど途中で挫折しているゲームです。

これも妙にリアルな世界観で、娯楽として没頭しきれなかったので。

「移民として働き、頑張っているけど、周囲からやや差別的な扱いを受けてしまう職場の同僚」、「外資系資本の多国籍企業の大手スーパーにお客をとられてしまう地元の小売店の店主」などなど、社会を反映した小ネタがあちこちにあり、関心していたのですが、一番驚いたのは、国外から原因不明の病が流行してしまうエピソード。

 

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なんと国内で謎の病が広がり、新しい手洗いルールが設けられてしまう!

あれ、私も現実の仕事場でこんな会話したような……

※画像はゲーム画面のスクリーンショットより

 

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仕事が終わり、街をぶらついていると、「こっちに咳をしないで!」と、

咳に対して過敏になっている人々がいたりする……

 

最初に発売されたのは2018年なので、コロナの事を予想してたと思えないのですが、手洗いの徹底や、咳をすると嫌がれる描写があったりと、ちょうど1月のロックダウンが厳しい時期に始めたので、遊びと割り切るには少し厳しくて、それ以来放置してあります。

もう少し落ち着いたらまた再開したいと思います。

 

 

 

まとめ:現実から離れたフィクションの方がハマれたかな…?

 上記で紹介したものは一部ですが、こうして読んだものや観たもの、遊んだゲームを振り返ってみると、ファンタジーやSFといった架空世界のエンターテイメントの方がエンジョイできてたようです。

しかしどこか現実の、特にコロナを彷彿とさせるものは素直に楽しめず、敬遠してしまった気がします。

 

同じような理由で現代を舞台にした実写ドラマなんかも、一時期は観てて違和感を感じるというか、「ちょっと前まではマスクなしでこんなに人と距離が近かったんだよね」という現実との微妙な乖離が気になっていたことがありました。

それだけロックダウン中は精神が過敏になっていたんですね。

 

今年は昨年よりもう少し気兼ねなくエンターテイメントを鑑賞できるようになってほしいです。

 

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